【先輩夫婦の体験談】こども一人ひとりに合わせた「出自」を自然体で伝えるヒント

「私を産んだ人はどんな声をしているのかな?」

これは、特別養子縁組で迎えたお子さんがふとした会話の中でこぼした言葉だそうです。

このようにアイデンティティを形成する時期となる思春期や青年期に「自分は何者なのか」と考える機会があるかと思います。
そのような時に、「自分がどこで誰から産まれたのか」「自分を産んだ人はどのような人なのか」といった自分の出自やルーツを知っておくことは、アイデンティティの形成の土台になります。

そのため、私たちは、フローレンスでお子さんを迎えることを希望される方・迎えた方に対して、「お子さんを特別養子縁組で迎えたことの事実や養子縁組に至った背景について、お子さんが成長していく過程にあわせて、お伝えください」と伝えています。

そして、フローレンスでは、特別養子縁組のあっせんを行う民間あっせん機関として、こどもの出自を知る権利を守るため、出自に関する勉強会やイベントを年に一度開催しています。
本記事では、昨年度開催した出自に関するイベントの内容や参加者の声をお届けします

 

学童期・思春期の3人のお子さんを子育て中の先輩夫婦の体験談

フローレンスでお子さんを迎えたご家族のもとでお子さんがすくすくと成長していく中で、
「学童期・思春期のお子さんへの出自やルーツの伝え方の体験談を知りたい」
「出自について伝えた時にこどもは、どのような反応をするのか」
「実際に学童期・思春期のお子さんを子育て中の方の話を聞きたい」
といった声が多く聞かれるようになりました。

そこで、2026年2月にフローレンスでお子さんを迎えたご家族向けに、特別養子縁組でお子さんを3人迎え、現在学童期・思春期のお子さんを子育て中のご夫妻をお招きして、体験談を聞く機会を設けました。

当日ご夫妻からは、
・出自を知る権利とは何か
・こどもの年齢別に何をどのように伝えたのか
・こどもに伝えるにあたって大切にしていること
・実際に思春期のお子さんが感じていること(生の声)
等についてお話いただきました。

出自を知る権利ってなんだろう?

そもそも出自を知る権利とはなんでしょうか。

出自を知る権利は、「子どもの権利条約」に定められている内容です。
そして、権利とは、全ての人が生まれながらに有している権利です。

皆さん「出自」と聞いて何をイメージされますか。
産まれた場所、産んだ人などを含め、産まれた背景をイメージされる方が多いのではないかと思います。

今回ご登壇された夫妻からは、産まれた背景だけでなく、
「初対面のエピソード」なども大事な出自であるというお話がありました。

「初めてあなたに会いに行った日は、雪が降っていて、パパとママで新幹線に乗ってお迎えに行ったんだよ」
「あなたに初めて会う前は、パパもママもすごくドキドキしてて、会ったときは小さくて可愛くて涙がでたの」
「パパもママも1番にあなたを抱っこしたかったけど、パパがママに1番を譲ってくれて、ママが1番に抱っこしたの」

私たちフローレンスもお子さんを迎えた日のエピソードや写真は、大事な出自の1つだと考えています。
そのため、お迎えの日の空の写真、産まれた病院を退院するまで愛情を持って接してくれたスタッフとの写真など可能な限り撮影を行い、ご家族に撮影した写真をお渡しをするようにしています。
また、写真だけでなく、対面場所へ向かう途中に、スヤスヤと眠っていたこと、お腹が空いてタクシー移動中に大泣きをしたことなど、エピソードもお伝えするようにしています。

お子さんが大きくなって言葉が理解できるようになり、自分の両親から対面時のエピソードを聞いた時に、
「私はたくさんの人に見守られてきたんだな」と思ってもらえたら嬉しいなと思いながら、
エピソードや写真などを大切に記録しています。

出自を伝えるにあたり大切にしている6つのこと

続いて、ご夫妻からお話いただいた「こどもに出自を伝えるにあたり大切にしている6つのこと」についてご紹介します。

日常の中で自然に話す

→こどもの誕生日など特別な日に緊張した面持ちで「実は・・・あなたはね・・・」と話すのではなく、家族で食卓を囲んでいるときやお風呂に入っている時などの日々の日常の中で「あなたを産んだ人はママじゃなくて、別にいるの」などと話していきます。小さい頃から日常の中で自然に話すことで、「私って〇〇さんから産まれたんだ」と自分の出自を知っていることが当たり前になっていきます。

こどもが聞きたい時に話す

→年齢とともにこどもから質問が出てくることもあります。また、「今は聞きたくない」と意思を示す時もあります。そのときのこどもの気持ちに合わせて対応していくと、こどもも安心してお話をしてくれるようになります。話す前には「今話していいかな」と声をかけ、こどもが聞く準備ができていることを確認してから話すようにしています。

こどもの成長や性格にあわせて話す

→例えば、3人とも3歳になったら産まれた背景についてそれぞれに伝えるということでなく、3人それぞれ成長や性格にあわせて、話すタイミングや内容を考えました。また内容は夫婦で事前に共有するようにしました。

嘘はつかない

→こどもによって手元に残っている写真や母子手帳にどこまでの情報が記されているか等は異なっています。このように、こどもが知りたいと思ったことの答えが分からないこともあります。「全部を知り得なくて当たり前であり、知らないことは素直に伝えること」を大事にしています。

こどもからいつでも話しやすい雰囲気をつくる

→こどもが知りたいと思った時に、聞ける関係性そして話しやすい雰囲気づくりをすることを心がけています。こどもは大人が思う以上に親の表情をよく見ています。特にこどもが幼いときは言葉より表情を感じており、親が強張った表情や悲しい顔をしていると、「これは聞いちゃいけないことなのかな」と無意識のうちに感じ取ることもあるので、前向きな気持ちで伝えられるようにしています。

こどもの気持ちを受けとめる

→伝えた内容によっては、こどもがネガティブな気持ちを抱くこともあります。そのような時には、「悲しい気持ちになったんだね」等とこどもが抱いた気持ちを受けとめます。抱いた気持ちを否定せずに聴いてもらえることは、こどもが成長の過程で自分の気持ちを整理していくことを支えてくれると思っています。

ご登壇された夫妻が育てていらっしゃる3人のお子さん一人ひとり産まれた背景は違うため、伝える内容は一人ひとり違ってきます。
一方で、3人のお子さんへ共通して伝えていることがありました。
それは、「産まれてきてくれてありがとう」「大好きだよ」という気持ちです。
このように大人の気持ちを伝えることで、こども自身が「産まれてきて良かった」と思ってもらえたらと話をしてくださいました。

「自然体」で「お子さんそれぞれの性格にあわせて」伝える

ご夫妻に体験談をお話いただいた後に、参加者がいくつかのグループに分かれ、感じたことや聞いてみたいことをシェアする時間も設けました。

グループでシェアする時間や事後アンケートより

「ちゃんと伝えなきゃと構えていたけど、話を聞いて自然に伝えていったらいいんだと肩の荷がおりた」

「これまで出自について夫婦で考えてこどもへ伝えてきたけど、これでいいのかな?という思いがあった。そんな中で、今回話を聞いてそれぞれのやり方で良いんだと思うことができた」

「こどもがまだ小さいこともあり、どんな風に伝えるかをイメージできていなかったため、日常生活の中で自然に伝えるのか!という発見があった」

「出自について相談する人や特別養子縁組でお子さんを迎えた先輩夫婦が身近にいないので、とても参考になった。またぜひ今回のような機会に参加したい」

親として我が子を大切に思い、出自を伝えることの重要性を理解しているからこそ、
伝えなきゃ!と知らず知らずにうちに身構えていたことに気づかれた方が多くいました。

そんな中で登壇いただいたご夫妻が「自然体」で、エピソードを交えながらお話をいただいたことで、正解はなく、「自然体」で「お子さんそれぞれの性格にあわせて」伝えたら良いということが分かり、会の最後には皆さんホッとされた表情をしていたのが印象的でした。

フローレンスでは、お子さんを迎えた方が「これが知りたい!」というニーズをフローレンスへ伝える機会があること、
そしてフローレンスとお子さんを迎えたご家族との間で、相談をしたり、伝えたいことを気軽に伝える関係性を大事にしています。

今後もお子さんの成長にあわせて出てくる出自やルーツに関していただいた声をもとに、会の企画を行っていきます。

 


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