出自をどう伝える?どう伝わる? ~家族の考えや実践をシェアしよう~
2025.03.07
こどもが自分の出自を知ることは、誰もが生まれながらに持つ大切な権利です。しかし、特別養子縁組では、お子さんに「どのタイミングで、どのように伝えればよいのか」と悩むご家族は少なくありません。
出自を伝えることには、大きく2つの側面があります。 1つ目は、縁組でお子さんを迎えたこと。 2つ目は、生みの親が育てられなかった背景について。
伝えるタイミングや方法は、それぞれの親子・家族によって異なり、決まった正解があるわけではありません。日常のふとした会話の中で自然に話題にしたり、養子縁組に至った背景だけではなく、迎えた時のご夫妻の嬉しかった気持ちや、その日のお天気や景色など情景について話したりすることも、伝え方の一つとなり得るでしょう。
こうした悩みや工夫を共有する場として、フローレンスでは養親向けの勉強会を開催しました。本記事では、その様子や参加者の声をお届けします。
出自の伝え方を養親同士でシェアする勉強会を開催しました
2025年2月、フローレンスでお子さんを迎えた家族向けに、出自を知る権利について考える勉強会を開催しました。本記事では、その様子や参加者の声をお届けします。
今回の勉強会では、実際に出自を伝えた経験をされた方や、これから伝えようと考えているご夫妻が集まり、それぞれの考えや工夫を共有しました。「早い方がいいのか?」「どのような言葉を選べばいいのか?」「こどもの年齢によって伝え方はどう変わるのか?」といった具体的なテーマについて、活発な意見交換が行われました。
「こどもがどのように受け止めるのか不安だったが、実際に伝えた家庭の経験を聞くことで安心できた」「他の家庭も同じように悩んでいることを知り、励まされた」などとさまざまな声もありました。
出自を伝えることは、難しいことだと捉えてしまいがちです。しかし、同じ立場のご家族同士が学び合い、支え合うことで、より良い方法を見つけていける、そんな場になりました。
「伝える」だけで終わらない。こどもの気持ちに寄り添う関わり方
勉強会では、「こどもが戸惑った時、どう対応すればいいのか」「年齢が上がるにつれて、どのように話を深めていけばいいのか」といった具体的な悩みが共有されました。また、実際に絵本やアルバムを使って伝えているご家族の体験談も紹介され、こどもがどんな反応をしたのか、その後の親子のやりとりについても話がありました。
あるご家族は、こどものために生い立ちをまとめた絵本を作り、一緒に親子で読んだそうです。しかし、お子さんはそのタイミングではあまり興味を示さなかったため、ご家族は無理強いせず、こどもの気持ちを尊重しながら、必要なときにいつでも話せる環境を整えていこうと考えたといいます。
このように、出自を伝えることは親の考えるペースではなく、こどものその時の気持ちや行動を見ながら、その子にあったペースを尊重しながら向き合い続けることが大切です。
参加者からは、「こどもの成長に応じて伝え方を変えていくことが大切だと実感した」「『いつでも話していいんだよ』という環境づくりが重要だと気づいた」といった声が聞かれました。
真実告知は、一度伝えたら終わりではなく、こどもの気持ちに寄り添いながら、折に触れて話していくもの。この勉強会を通じて、その姿勢の大切さを改めて確認する機会となりました。
先輩養親の体験から学ぶ、年齢ごとの伝え方の工夫
「3歳のうちはどのように伝える?」「思春期に入ったらどのように対応する?」——勉強会では、こどもの年齢に応じた伝え方についても意見が交わされました。
例えば、生んでくれた母親が別にいると伝える際、「お母さん」という言葉を使うと、幼児期のお子さんにとっては、「お母さん」が2人登場することで、こどもを混乱させてしまいます。そのため、産みの親のことを「お母さん」と呼ばずに、その方の名前で「○○さん」と呼ぶことで、こどもにとってわかりやすい形で伝える工夫をしている家庭もありました。
また、産みの親と同様に生物学上の父も存在しているはずですが、特別養子縁組において、父の情報が少ないケースが多いため、父の存在の伝え方についても、話題にあがりました。ただし、その存在をこどもが理解をするためには、生殖に関する知識も必要になるため、性教育とセットにして段階的に伝えていくことが望ましいという意見も出されました。
年齢が上がるにつれて、より具体的な話をする家庭もあり、どのタイミングでどこまで伝えるかは、それぞれの家庭の判断とお子さんの性格やペースに合わせて進められているようです。
実際に参加者からは、「年齢の異なるこどもを育てる家庭の話を聞くことで、今後の見通しが立った」「成長に応じた伝え方の工夫が知れて参考になった」といった声がありました。
また、「高校生や大学生になった養子当事者の話を聞いてみたい」という希望も寄せられ、より幅広い年齢のケースについて知りたいという期待がありました。こうした声があったことを踏まえ、今後の勉強会の新たなトピックとしてぜひ検討していきたいです。
「出自を伝えることの大切さを実感。次の一歩へ
今回の勉強会を通じて、ご家族からはは「出自を伝えることは、こどもが自分自身を理解し、健やかに成長するために欠かせない」ということを改めて実感できたとの声が寄せられました。
また、「さまざまな家庭の取り組みを知ることができて、次のステップが見えてきた」「定期的にこのような場があると心強い」といった声も多く寄せられました。
フローレンスでは、今後もこうした学びの場を提供し、縁組でお子さんを迎えたご家族同士が気軽に話し互いに支え合える場ををつくっていきます。
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